教授挨拶

mayu_takahashi

 令和6年10月1日付けで、東北大学大学院医学系研究科・生体システム生理学分野の第6代教授を拝命しました。本分野(旧第二生理学教室)は、日本に初めて感覚生理学を導入した藤田敏彦教授、日本における脳波研究の開拓者であり後に東北大学総長を務めた本川弘一教授、網膜における抑制機構を解明した田崎京二教授、大脳高次運動野研究で国際的評価を得た丹治順教授、そして前頭前野や高次機能の神経生理学を探究した虫明元教授らを輩出し、日本の神経科学を牽引してきました。長い伝統を受け継ぐことは大変光栄であると同時に、その責任の重さを実感しています。

 私は医学部学生時代に神経生理学と出会い、眼球運動系をモデルとして、感覚情報がどのように運動へと変換されるかという脳の根源的なしくみに取り組んできました。神経回路を一つずつ明らかにすることで、脳内における情報処理の流れを理解し、脳が果たす役割の本質に迫りたいと考えています。

 東北大学には、知的好奇心に根ざした基礎研究を尊重する学風があります。その伝統の上に立脚しながら新しい視点を取り入れ、神経科学のさらなる発展に寄与するとともに、学生や若手研究者が育ち、ここから世界へと研究を発信していける場を築いていきたいと思います。

 今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。


東北大学大学院医学系研究科 生体システム生理学
 教授 高橋 真有

生体システム生理学分野
(旧第二生理学講座)の歴代教授

藤田 敏彦

(1917~1939)

 藤田教授は初代教授で我が国に初めて感覚生理学を導入した研究者で、研究分野は視覚、その他聴覚や皮膚感覚に関するものもある。感覚生理学として戦後になって発展してきたことは周知のとおりである。

 藤田の功績として忘れてはならないものの一つに Tohoku Journal of Experimental Medicineの育成に対する努力がある。

本川 弘一

(1940~1966)

 本川教授は日本における脳波研究のパイオニアである。昭和29年(1954年)には「脳電位の研究」として日本学士院賞を授与された。その後色覚の研究によって朝日賞を受けた。本川は医学部長、歯学部長を経て、昭和40年(1965年)に学長となり、昭和46年(1971年)に病をえて在任中に世を去った。

田崎 京二

(1966~1988)

 昭和41年本川教授が学長に就任した後を受けて助教授の田崎京二が教授に昇進した。視覚生理学、特にヒトのERGの研究、動物の網膜の研究を行った。主な成果として網膜に存在する2種類の抑制機構の解明がある。側方抑制と遠心性のドーパミン作動細胞に由来する抑制機構を明らかにした。

丹治 順

(1989~2005)

 丹治教授は脳・神経生理学研究という教室の伝統を引き継ぎ、運動と行動の制御機構に関与する大脳の研究を主なテーマとした。研究は霊長類を対象とし、大脳皮質の高次運動野の機能の解明で特に運動関連大脳皮質の機能解明に貢献した。大脳、二次運動野に関する研究結果は第32階国際生理学会(グラスゴー)での招待講座等、数多くの国際シンポジウムで発表され、評価を受けた。

虫明 元

(2005~2024)

 虫明教授は、脳・神経生理学の伝統を継承し、運動や行動制御の研究を発展させつつ、前頭前野や補足運動野などにおける「先読み細胞」「時間細胞」「動作更新細胞」「カテゴリー細胞」や、頭頂連合野における「ゼロ細胞」などの新規細胞を発見。脳局所回路のダイナミクスや数理モデル化、医工学・情報科学との連携を通じ、脳の高次機能や複雑系としてのシステム論の解明に貢献している。